戯曲だけじゃない!漫画・小説で読む演劇



自宅待機が長引く毎日。普段、なかなか手の付けられなかった本棚の整理を少しずつ進めています。

出てくる、出てくる演劇関連の本、本、本。
パンフレットに会報誌、戯曲に小説、雑誌。

その中から今回は、演劇がでてくる漫画・小説をまとめました。

読む演劇といえば戯曲が一番最初に思いつきますが、独特の形式が少し苦手…。
漫画や小説であれば大まかな演出も含めて書かれているので想像しやすく、読みやすいんです。

名作すぎる未完の演劇漫画「ガラスの仮面」


「ガラスの仮面」 美内すずえ

1975年、漫画雑誌「花とゆめ」で連載が始まった超超超有名な演劇漫画。
平凡な少女北島マヤが、演劇的才能を開花させ伝説の舞台、『紅天女』を目指すお話。

マヤと対照的なライバル姫川あゆみ、周囲の人たちの波乱万丈な人生にも強烈に引き付けられるのですが、なんといってもこの作品の魅力は漫画の中でたくさんの芝居が読めること!稽古シーンと公演本番シーンで劇がすすみ、漫画の中で描かれる芝居と、漫画の進行がダブルで楽しめます。

作者の創作も多々ありますが、たけくらべ、嵐が丘、王子と乞食、奇跡の人、若草物語、夏の世の夢なども登場し、幼いころに多くの名作を知るきっかけになりました。

作中で描かれる稽古や本番は演劇あるあるというよりは、作者の美内さん自身もおっしゃっているように実際の演劇の現場で「ないない」ってことが多いんですけど、まぁそれも面白くって。

演技はスタニフラフスキーの演劇理論に基づいているように描かれています。
演劇をやったことがないという人の中にもなんとなく持っている演劇のイメージにスタニフラフスキーの演劇理論が染み入っているのはこの漫画の影響なんじゃないかしら、と憶測します。実際、小学生のときに私がそうでしたし、この漫画の演劇の世界を100%近く信じていました。

今、読み返すと演劇理論以前の部分で本当に「ないない(笑)」づくしなんですけどね。

ちなみに休載や書き直しを挟みつつ、連載開始から45年を迎える2020年現在、ガラスの仮面はまだ完結していません(現在休載中)。

ガラスの仮面の小説版?「チョコレートコスモス」

 

「チョコレートコスモス」 恩田陸

「6番目の小夜子」、「百万年ピクニック」で恩田陸さんの演劇小説。
作者があとがきで、ガラスの仮面に言及されているように、小説版「ガラスの仮面」と言いたい作品。

芝居を始めたばかりの大学生、飛鳥。できたばかりの劇団に入ったところ、急遽公演が決まり、あれよあれよという間に才能を見出され、伝説のプロデューサー芹澤の舞台のオーディションを受けることになる。

飛鳥はガラスの仮面でいう北島マヤで、姫川あゆみさん的ライバルもいて、伝説の舞台に挑むって、ガラスの仮面じゃないか。
公演やオーディションの描写は、読むことを止められないくらいドキドキします。

同じ戯曲で解釈を変えて演じる、というのがこの小説でも、ガラスの仮面でも登場するのですが、こちらは文章で意図や動きがしっかりと説明されている分、ほーっと感心する度合いが大きくなりました。

演劇好きな人ならば、何人かモデルがわかるようなキャラも出てきます。読んでいると、頭の中でご本人の声で再生されてしまうくらい。

ちなみに…。
この作品は、「チョコレートコスモス」、「ダンデライオン」、「チェリーブロッサム」と3部作となる予定でした(文庫本のカバーにも、作者の言葉で書かれている)。
しかし2作目の「ダンデライオン」の執筆途中、連載されいた雑誌が廃刊となり、その後単行本化もされていないようです。
「チョコレートコスモス」が本当におもしろい作品で、最後まで見届けたい思いがいっぱいなので残念です。

ももクロ主演で映画化「幕が上がる」


 

「幕が上がる」 平田オリザ


ももクロちゃん主演で映画化されたこの小説は、青年団の平田オリザさんの著作です。
チョコレートコスモスの読了後、もっと演劇を扱った小説が読みたいと思って購入しました。
コチラはさわやかな青春部活ものです。おそらく演劇って要素をひいても、少女たちの青春物語として面白い作品でした。

チョコレートコスモスが、小劇場や商業演劇を扱っているのに対し、こちらは部活動として取り組む高校演劇。
いろんな制約や事情があるなかで、少女たちが真剣に取り組む魅力が伝わってきます。

ただどれだけ真剣に取り組んでも、校内ですらなかなか注目をしてもらえない演劇部。やる気はあっても頭打ち感が否めない空気の中、かつて「学生演劇の女王」(笑)と呼ばれた新顧問の吉岡先生から、演劇の窓を大きく開けてもらったような、世界が大きく広がる瞬間を目撃している気持ちになります。

私はこれをきっかけに「高校演劇」というジャンルに興味を持ち、翌年から高校演劇の大会みにいくようになりました。そしてNHKで毎年放送される、全国大会を特集した番組「青春舞台」も必ず見ています。

劇団経営のお話「シアター!」


 

「シアター!」 有川浩

図書館戦争シリーズや、阪急電車でおなじみの有川浩さんの小説。

300万の負債を抱えた劇団「シアターフラッグ」。
お金を貸してくれた劇団代表の兄、春川巧が出した条件は、2年以内に劇団の売り上げだけで300万円を返還すること、それができなければ劇団解散というもの。

「劇団の黒字化」にまじめに取り組む若者たちの物語。

先に紹介した作品に比べて、小説内の演劇そのものよりも、公演に向けて奔走する姿を中心に描いた作品です。


同シリーズは「シアター!」「シアター!2」と、「もう一つのシアター!」が販売されています。
1巻目は債権者で劇団の鉄血宰相と呼ばれる春川巧の視点から、2巻目は各章ごとに劇団員の視点から描かれています。
劇団の経営、演劇をつくるためのお金の考え方が、作中でわかりやすく書かれているので、劇団やっている人にはぜひ読んでほしいです。
私は制作的な視点がおもしろくて読んでいた作品でしたが、思いもかけずに2巻のラストで大泣きしました。

「もう一つのシアター!」は「シアター!」を原作とした舞台の脚本となっています。

シリーズは、「シアター!3」で完結予定とのことで、楽しみに待っているのですが、2巻目の発売からすでに9年が経過しています。
ガラスの仮面、チョコレートコスモスと、なぜこうも演劇ものは未完が多いのか。

いつか再び続きが執筆されることを望みます。


リアルな高校生の演劇「濡れた太陽」

 

「濡れた太陽 上」「濡れた太陽 下」

「幕が上がる」と同様、高校生たちの演劇青春物語。
「幕が上がる」がカリスマ顧問の指導のもと、めきめきと実力を付けて行くのに比べて、こちらはもう少し地味というか、泥臭いと言うか。
演劇だけでなく、恋愛やスクールカーストも絡む中、地道に、自力で道を開拓していくところにリアリティがある作品です。
こちらは上下巻とも出版している完結作品です。

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